
FDEニーズはなぜ急増している?国内73社の求人を徹底分析
FDE(フォワードデプロイドエンジニア)の求人が増えている背景には、AIを提供する企業が、導入して終わりにせず、顧客の業務で使われるところまで担い始めたことがあります。国内でFDEを募集する73社の求人から、募集企業、求める役割、年収の実態を解説します。
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FDEという言葉を、この1年でよく目にするようになった方も多いと思います。米国ではFDEの求人が2024年から桁が変わるほど増え、日本でも2026年に入って、FDEの組織や職、サービスの公表が相次いでいます。求人の出し手と各社の説明をたどると、その背景に、AIを売る側が、AIを顧客の業務で使われる状態にするところまで、自分たちで担う方向に動いたことが見えてきます。2026年9月に、国内でFDEを募集している73社の求人を集計すると、最も多い出し手は国内のAI・ソフトウェア企業(40社)でした。求人を読み比べると、FDEは、自社製品を顧客に導入するFDEと、自社製品を前提とせず、顧客の課題に合わせてAI化を進めるFDEの2つに分かれ、企業が求める役割も違います。
国内でFDEを募集している73社の求人は、各社の採用ページで1件ずつ確かめました。求人に書かれた募集背景も読み、各社がなぜこの職を置くのかを拾っています。FDEの需要を語る数字には、元の資料から意味が変わって広まったものもあるため、引用される数字は出所まで遡りました。
FDEとは
FDEについては、以前の記事『FDEとは?年収・必要スキル・キャリアパスと企業が確保する方法』で、仕事内容や年収、キャリアまで詳しく解説しました。改めて定義を確認しておくと、FDE(Forward Deployed Engineer)とは、自社のプロダクトを持つ企業に所属しながら、顧客企業の業務の現場に入り込み、課題の特定からシステムの実装、運用の定着までを一人または少人数で担うエンジニアです。米国のPalantir社が確立した働き方で、AI導入の広がりとともに独立した職種名として定着しました。
ただし、国内の求人では、FDEはこの本来の定義より広い意味で使われています。自社のプロダクトを持たない会社や、社外の顧客ではなく自社の事業部に向けて募集する会社もあります。以前の記事では、この広がりを「日本のFDEの範囲」の章で整理しました。実際の求人を読むと、広がりの中身がより具体的に見えてきます。
FDE求人の増え方
米国ではFDEの求人が件数で見て2024年から桁が変わるほど増え、日本では2026年4月以降に、FDEの組織や職、サービスの公表が集中しています。日本には求人件数の推移を追える集計がないため、広がりは各社が公表した時期から読み取ります。
米国のFDE求人は、2024年の約200件から2026年は7か月で5,200件を超えた
労働市場のデータを扱うLightcastによると、米国のFDE求人の掲載は、2024年の約200件から2025年に約1,200件へ増えました*1。2026年は1〜7月だけで5,200件を超え、2025年通年の4倍を上回っています。
それでもLightcast自身は、既存の技術職と比べれば需要はまだ小さいとしています*1。伸び率が大きく見えるのは、出発点の件数が少なかったからでもあります。
日本語の解説記事では、FDEの求人が643件から5,330件に増えた(前年比729%増)という数字も引かれています。もとは米Business InsiderがIndeedのデータとして報じたもので、同誌が報じたのは2025年1月の水準と比べた伸び(543%と5,230%)です。643と5,330は、この伸びを、基準を100とした指数に直した値で、求人の件数ではありません。729%は、この指数の2025年4月から2026年4月への伸びです。同誌は記事に、指数の値を求人の件数と誤って書いたという訂正を付けています*2。
日本では、2026年4月以降にFDEの公表が相次いだ
日本で出たFDEに関する主な公表を日付順に並べると、12件のうち9件が2026年4月以降に集中しています。表1は、企業自身の発表で日付を確認できた、FDEの組織や職の新設、サービスの開始、提携、経営計画での表明を並べたものです*3*4*5*6*7*8*9*10*11*12*13*14。アクセンチュアの行は、日本語版の掲載日で並べています。
| 公表日 | 企業 | 内容 |
|---|---|---|
| 2025/07/17 | LayerX | FDEの募集開始をエンジニアブログで告知 |
| 2025/12/23 | AI Shift | FDE職を新設 |
| 2026/01/21 | SHIFT | 特定の製品に縛られない「アドバンスドFDE」を提供開始 |
| 2026/04/16 | アクセンチュア | マイクロソフトと組むFDEの専門組織を発表(3月18日の米国での発表の日本語版) |
| 2026/04/30 | デロイト トーマツ | FDE人材の活用を本格化。6月にFDEマネジメントオフィスを設置すると発表 |
| 2026/05/15 | 野村総合研究所 | 中期経営計画の説明会で、FDEによる領域の開拓を掲げる |
| 2026/06/08 | セールスフォース・ジャパン | FDEのパートナー制度を日本で本格展開。初期パートナーは9社 |
| 2026/06/16 | フォーティエンスコンサルティング | FDE型のコンサルティングを提供開始。5年後に売上100億円規模を目指す |
| 2026/06/22 | エクサウィザーズ | FDEが常駐するサービスを中核とする新会社の設立を決議 |
| 2026/07/03 | Insight Edge | 5月にFDE職を新設したとテックブログで公表 |
| 2026/09/03 | 日立製作所 | 「Physical AI FDE Team」によるサービスを提供開始 |
| 2026/09/10 | 富士通 | PalantirのGlobal FDE Partnerとして体制を強化 |
2025年に動き出したのは、自社のAI製品を持つソフトウェア企業でした。2026年の春からは、大手のコンサルティング会社やSI(システムインテグレーター)が、組織やサービスを相次いで打ち出しています。
FDE求人の調査結果
2026年9月20〜21日に企業自身の採用ページで確かめると、国内でFDEの求人を出していた会社は73社で、最も多い出し手は国内のAI・ソフトウェア企業の40社でした。次に多いのはSI・コンサルティング・受託開発の16社で、海外のAI・ソフトウェア企業の日本拠点が10社、自社やグループ内の業務に向けた求人が7社と続きます。出し手ごとの社数と主な企業を、表2にまとめました。
国内FDE求人 定点集計(2026年9月)/AI Ops Manager調べ、2026年9月20〜21日時点
| 求人の出し手 | 社数 | 主な企業 |
|---|---|---|
| 国内のAI・ソフトウェア企業 | 40 | LayerX、Sansan、キャディ、カミナシ、アンドパッド |
| SI・コンサルティング・受託開発 | 16 | 富士通、NTTデータ、デロイト トーマツ、TOPPAN、JDSC |
| 海外のAI・ソフトウェア企業(日本拠点の求人) | 10 | OpenAI、Google、日本マイクロソフト、セールスフォース・ジャパン、Palantir |
| 自社・グループ内の業務に向ける求人 | 7 | マネーフォワード、PayPayカード、KINTOテクノロジーズ、メドレー |
- 対象:勤務地が日本で、職種名に「FDE」「Forward Deployed」「フォワードデプロイド」「フォワードデプロイ」のいずれかを含む求人
- 確認先:企業自身の採用ページ(HERP、HRMOS、Talentio など、企業が管理する採用管理システムを含む)
- 数え方:求人の掲載を確認できた企業の数。同じ企業の複数の求人と、同じ組織の別表記は1社にまとめた
- 除外:掲載終了、業務委託の案件、人材紹介サービス、求人アグリゲーターの転載、日本拠点を確認できないもの
- 募集背景の判定:募集背景にあたる記述を取得できた50社について、判定の基準を文で定めて2回独立に判定し、両方で該当したものだけを数えた
年収を円で書いていたのは50社。下限の中央値は750万円
想定年収を円で書いていた50社の金額を、表3にまとめました。下限と上限で社数が違うのは、片方だけを書いている求人があるためです。
| 項目 | 金額・社数 | 対象 |
|---|---|---|
| 下限の中央値 | 750万円 | 下限を書いていた49社 |
| 上限の中央値 | 1,500万円 | 上限を書いていた46社 |
| 金額の幅 | 400万〜3,000万円 | 50社 |
| 上限が2,000万円以上 | 8社 | 上限を書いていた46社 |
募集の対象も、経験者に限りません。富士通は新卒向けのインターンシップにもFDEの枠を設けており、2026年12月に1か月の日程で実施します*15。年収の相場と、FDEの年収が高くなりやすい理由は、『FDEとは?年収・必要スキル・キャリアパスと企業が確保する方法』の年収の章で整理しています。FDEへの転職の道筋も、同じ記事の「FDEへのキャリアパス」の章で扱っています。
職種名は揺れている
FDEを募集する求人でも、職種名の書き方はそろっていません。確認できた表記には、次のようなものがあります。
- 「ド」を落とした表記:フォワードデプロイエンジニア
- 社内向けを示す表記:Forward Deployed Engineer(Internal)、社内FDE
- 日本語の職種名にFDEを添える表記:AIソリューションエンジニア(FDE/Forward Deployed Engineer)
- Palantirの表記:Forward Deployed Software Engineer
反対に、FDEという名前を使わずに近い仕事を募集している会社もあります。今回確認した範囲では、みずほフィナンシャルグループ、第一生命、ファーストリテイリング、東京ガスなど大手事業会社10社が、自社の業務にAIを実装する職を別の名前で募集していました*16。表2はFDEの名前で募集している会社だけを数えているので、近い仕事まで含めれば、募集している会社はさらに増えます。
FDEの種類と企業がそれぞれに求める役割
同じFDEという職種名でも、求人を読み比べると、任される仕事はかなり違います。分かれ目は、自社の製品を前提にしているかどうかです。求人の職務記述から分けると、自社製品を顧客に導入するFDEと、自社製品を前提とせず、顧客の課題に合わせてAI化を進めるFDEの2つになります。この2つは、以前の記事で紹介した5つの類型とは別の切り方です。
自社製品を顧客に導入するFDE
自社のAI製品や、クラウドで提供するソフトウェアを顧客の現場に導入し、製品の標準機能と、顧客ごとに違う業務のあいだを埋める仕事です。表2の出し手でいえば、国内と海外のAI・ソフトウェア企業がこの形の求人を出しています。
製造業向けのデータ基盤を提供するキャディは、求人に「標準機能の提供だけでは解ききれないお客様固有の高度なビジネス要件や、既存システムとの深いインテグレーションが求められるケースが急速に増加しています」と書いています*17。飲食業界向けに採用や労務、シフトなどの業務の仕組みを提供するシェアダインも、「クライアントごとに業務実態は大きく異なり、画一的な機能提供だけでは本質的な課題は解けません」としています*18。
顧客の課題を解いたあと、得た知見を製品に戻すところまで求める会社もあります。RevCommは、顧客ごとの対応で得た知見を抽象化し、「PdMや開発組織と連携しながらプロダクト進化へ還元します」と書いています(PdMは製品の方針を決めるプロダクトマネージャー)*19。
自社製品を前提とせず、顧客の課題に合わせてAI化を進めるFDE
顧客の課題を起点に、既存の製品で足りるものは選んで使い、合うものがなければ一から開発します。表2の出し手でいえば、SI・コンサルティング・受託開発の会社と、自社やグループの業務に向けて募集する会社が、この形の求人を出しています。
ブーストコンサルティングは「案件に応じて最適な技術を選定するため、特定の技術スタックには限定していません」と書いています*20。ACESは「一般的な受託開発のように、定められた要件をもとにシステムを構築するだけではありません」と書き、要件定義や技術選定、設計から担うとしています*21。
製品を選ぶ側の会社が、ソフトウェア会社と組む動きもあります。アクセンチュアは、マイクロソフト*6、ServiceNow*22、Google Cloud*23、SAP*24と、それぞれFDEの組織やプログラムを発表しました。セールスフォース・ジャパンは2026年6月にFDEのパートナー制度を日本で本格的に始め、初期パートナーとして富士通、NTTデータ、PwCコンサルティングなど9社を挙げています*9。一方でSHIFTは、特定の製品に縛られず、顧客に合う製品を選んで入れることを打ち出したFDEのサービスを始めました*5。
入る先は、社外の顧客とは限りません。マネーフォワードは「Forward Deployed Engineer(Internal)」*25、STRACTは「社内FDE」*26という職種名で、自社の事業部に入るFDEを募集しています。PayPayカード、KINTOテクノロジーズ、メドレーも、自社やグループの業務にAIを実装するFDEを募集しています。
STRACTは採用背景に、事業の成長に比例して業務の量と複雑さが増し、これまでは既存メンバーの工夫や努力で補ってきたと書いています。さらに成長するには、現場の業務プロセスにエンジニアが入り込むことが欠かせないとして、この職を新設しました*26。PayPayカードは「各部門の業務課題は個別性が高く、単にAIツールを提供するだけでは十分な活用・定着にはつながりません」と説明しています*27。事業会社が自社の業務にFDEを置くときは、この形になります。
FDEと組んで、何を作るかを決める職もある
FDEは一人で動くとは限りません。PalantirとLayerXの求人では、FDEと並んで、顧客の現場で課題を聞き取って整理する担当を、Deployment Strategist(課題を定義する担当)という別の職で募集しています*28*29。LayerXの求人は、この担当がFDEと「ペアを組み」、AIエージェントを設計すると書いています*29。デロイト トーマツも発表で、この担当とFDEの連携を打ち出しています*7。FDEの求人だけを数えると、同じ仕事の一部を担う職を取りこぼすことになります。
客先常駐SEの言い換えではないのか
求人に書かれた仕事の範囲からは、SES(働いた時間で対価を受け取る客先常駐の契約)との違いを読み取れるものがあります。前章の定点集計で募集背景を読めた50社のうち、半数近い23社は、試験導入で終わらせず、本番の運用や業務への定着まで担うことを、募集背景や職務の説明に書いていました。このうち21社は、社外の顧客の業務に入る求人です。人手を出すことではなく、業務で使われる状態にすることを仕事の範囲に置く求人が、半数近くあることになります。
FDEも、SESで働くエンジニアも、顧客の現場で働くので、外から見れば似ています。国内では『「FDE」って結局、客先常駐SEのリブランディングじゃないの?』という題の記事も出ています*30。同じ記事は、アクセンチュアが、働いた時間ではなく、あらかじめ決めた成果に対して対価を受け取る契約を実践していると伝えています*30。
とはいえ、求人の題名だけでは区別がつきません。インターセクトは2026年1月、「SES経験者歓迎」を題名に掲げてFDEを募集していました(9月に掲載終了)。本文にSESへの言及はなく、仕事は自社のAI製品を顧客の業務に定着させるところまで担うものでした*31。題名の「SES経験者歓迎」は、応募する人の経歴についての言葉と読めます。職種どうしの違いは、『FDEとは?年収・必要スキル・キャリアパスと企業が確保する方法』の「他の職種との違い」の章で比べています。
FDEの需要が急増している理由
表2で見たとおり、国内でFDEを募集しているのは、大半がソフトウェアやAIの導入サービスを売る側の企業です。海外でも、FDEの求人を多く出しているのは売る側の会社です。FDE人材の派遣を手がけるPlankの集計では、掲載中の求人が多い会社の上位に、Databricks、Palantir、Salesforce、OpenAIなど、AIやデータ基盤を売る会社が並びます(2026年9月12日時点の565社・1,333件で、米国外の勤務地を含む)*32。
米国の求人の伸びも、日本での公表の集中も、売る側が、AIを顧客の業務で使われる状態にするところまで自分で担うようになった動きとして読めます。
求人の多くが、製品や技術を渡して終わりにしない役割を求めている
定点集計で募集背景を読めた50社のうち31社が、製品や技術を渡すだけでは足りないこと、または顧客ごとに作り込む必要があること(22社)か、試験導入で終わらせず本番・定着まで担うこと(23社)を、募集背景や職務の説明に書いていました。両方に当たるのは14社です。どちらも求人を出した会社自身の説明です。
50社のうち11社は、現場で得たものを自社の製品や資産に戻すことも書いていました。これらの会社では、FDEは製品を改良するための経路にもなっています。
ただし、これは各社がFDEに何を求めているかを示す数字で、求人が増えた原因を直接示すものではありません。
導入の担い手を、売る側が抱えるようになった
動きは2025年に始まっていました。米国のFDE求人は2025年に前年の約6倍になり*1、日本でもLayerXが7月にFDEの募集を始めています*3。12月にはAI Shiftが、FDE職を新設したことをテックブログで公表しました。同社は、2024年に設けたビジネステック職(ビジネスと技術の両方を担い、顧客と接する職)では、顧客が増えて案件が複雑になるにつれて技術の深さなどが足りなくなり、より高い要件の職としてFDEを設けたと説明しています*4。
2026年には、AIの開発元やクラウドの事業者が、FDEの組織づくりに乗り出しました。OpenAIは5月、FDEを企業に送り込む専門の会社を、40億ドルを超える初期投資で立ち上げています*33。AWSは6月、FDEの組織に10億ドルを投じ、数千人規模の専門家を顧客のチームに送り込む計画を発表しました*34。OpenAIの狙いは、『FDEとは?年収・必要スキル・キャリアパスと企業が確保する方法』の「なぜいまFDEが求められるのか」の章で扱っています。
売り方にも変化が出ています。AWSは発表で、導入は請求できる作業時間ではなく、顧客と共有する目標と事業の成果を軸に組むとしています*34。AIエージェントを提供する米国のSierraは2024年末、成果が出たときに料金を払う形がAIエージェントで可能になったと説明し、自社もこの形をとっています。ただし、いつも最適な形とは限らないとも書いています*35。成果に対して対価を受け取るなら、売る側は、AIが顧客の業務で使われるところまで担うことになります。
導入の案件の増加に、担い手が追いつかないと書く会社もある
定点集計の50社のうち6社が、導入や案件の増加に担い手が追いつかないと書いていました。LayerXは「導入プロジェクト数が急激に増加しており」と書き*36、ストックマークは「PoCから本番導入、RAG高度化、AIエージェント構築を含むプロジェクトが急増中です」としています*37。PoCは試験導入、RAGは社内の文書などを検索してAIの回答に使う仕組みのことです。
どちらも件数や期間のない各社の説明ですが、これらの会社で、案件が担い手より速く増えていることは読み取れます。
既存の仕事に、FDEという名前が付いた
一方で、日本で相次いだFDE職の新設や求人の、少なくとも一部は、これまで決まった職名のないまま担っていた仕事にFDEという名前を付けたものです。Preferred Networksは求人で、「PoCで終わらず、業務の中核にAIエージェントを組み込むプロジェクトが急増しています」と書いています。そのうえで、顧客の最前線で生成AIを実装する役割は「これまで PFNのエンジニアが暗黙的に担ってきた」もので、これをFDEとして明示的に定義したと説明しています*38。
人の出どころにも注意が必要です。米Salesforceは自社のニュースサイトで、社内の3つのチームをもとにFDEのチームを作り、半年で3倍に増やしたと書いています。同社は、FDE職への配置の4〜5割が社内からの異動だとも書いており、同社のFDEの増え方は、すべてが新しい採用によるものではありません*39。
FDEという名前が付いただけの分は、新しい需要ではありません。それでも、決まった名前のなかった仕事が職として切り出され、求人や組織の名前になったことは、この1〜2年の変化です。
自社に必要なFDEの見分け方
FDEをどこから迎えるかは、解きたい業務と、案件が終わった後に何を社内に残したいかで決まります。迎え方ごとに、案件が終わった後に何が残るかと、向いている場面を表4にまとめました。
| FDEの迎え方 | 案件が終わった後 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 製品を提供する会社のFDEを迎える | 製品は残り、FDEは離れる | 入れる製品と、それで解く業務が決まっている |
| SIやコンサルティング会社のFDEに頼む | 作った仕組みは残り、FDEは離れる | 製品選びから任せたい、または製品では解けない業務がある |
| 自社でFDEを雇う | 担い手が社内に残る | 業務をAI前提で作り直し続けたい |
3つのうち、案件が終わった後に担い手ごと社内に残るのは、自社でFDEを雇う場合だけです。外から迎えるFDEが次の案件へ移ったあと、使われ方を見て仕組みを直し続ける役は、社内の誰かが引き受けることになります。外のFDEが担う範囲の考え方は、『FDEとは?年収・必要スキル・キャリアパスと企業が確保する方法』の「企業がFDEを確保するには」の章で整理しています。
調査を見ると、AIを使う企業は多い一方で、業務の変革に組織として取り組んでいない企業が米国より多く、AIの効果も業務の効率化が中心です。総務省が、従業員10名以上でデジタル化に取り組む企業の管理職以上に尋ねた調査では、生成AIを一つ以上の業務で利用していると答えた割合は86.4%でした*40。一方で、生成AIによる業務変革に「組織的な取り組みはない」という回答は27.0%で、米国の1.4%を大きく上回ります*41。
IPA(情報処理推進機構)の調査では、効果の中身に偏りが見えます。AIを導入済みか試験利用中で、効果が一定以上あったと答えた853社のうち、効果の内容に業務の効率化や迅速化を挙げた会社は91.6%でした。売上や利益の向上を挙げた会社は3.9%にとどまります*42。調査が示すのはここまでですが、効率化の先にある売上や利益に届かせようとすると、業務の組み立てそのものを見直すことになりやすいと考えられます。その作業は、業務の中に入って使われ方を見ながら直し続ける人がいるほうが進めやすくなります。
自社でFDEを募集するときも、外から迎えるときも、職務記述や発注の範囲で次の3点をはっきりさせておくと、求める役割を取り違えにくくなります。
- 何を使うか:特定の製品の導入を前提にするか、課題に合わせて製品を選び、なければ開発するか
- 課題の定義から任せるか:何を作るかを決めるところから入るのか、決まった要件を作るのか
- 実装の責任をどこまで持つか:本番の運用と業務への定着まで担うのか
国内では、自社やグループの業務に向けたFDEの求人を出していた会社が7社ありました。今回確認した範囲でも、大手事業会社10社が、名前は違っても近い仕事を募集していました。AI人材を採用、研修、派遣のどれで確保するかを考えるより先に決めたいのは、業務の中に常駐して実装と定着まで担う役割を置くかどうかです。自社でFDEを雇うのは、その役割を置く形の一つです。社内で担い手を用意する進め方は、『FDE育成について徹底解説。採用・外部活用との使い分けと、育成の進め方』で、採用、育成、外部の活用の使い分けとあわせて整理しています。
まとめ
FDEの求人が米国で急増し、日本で公表が相次いでいる背景には、AIを売る側が、AIを顧客の業務で使われる状態にするところまで担う方向に動いたことがあります。国内の73社の求人を見ると、FDEは、自社製品を顧客に導入するFDEと、自社製品を前提とせず、顧客の課題に合わせてAI化を進めるFDEの2つに分かれ、企業が求める役割も違いました。
自社で最初にできるのは、AIを入れたのに業務の中で使われていない仕事を一つ選ぶことです。その業務が決まれば、中に入って作り直す役割を、表4のどの迎え方で置くかを選べるようになります。
最近よく耳にするFDEは、AIを渡して終わりにせず、顧客の業務の中に入って、使われるところまで担う人です。自社のAI推進も、外に委ねて待つのではなく、中に入って一緒に動かす役割をどこに置くかから始まります。
よくある質問
Q. 日本でFDEを募集している企業は何社ありますか?
職種名にFDEを含む求人を出していた企業は、各社の採用ページで確認できた範囲で73社でした(2026年9月20〜21日時点)。FDEという名前を使わずに近い仕事を募集している企業は含んでいません。
Q. 「FDE求人が前年比729%増」は本当ですか?
729%は、Indeedが米Business Insiderに提供した求人指数(2025年1月の水準が基準)の、2025年4月から2026年4月への伸びです。指数の対象地域は、Business Insiderの記事からは特定できません。日本語の記事で引かれる「643件→5,330件」は、同じ記事にある2025年1月比の伸び(543%と5,230%)を指数に直した値で、求人の件数ではありません。Business Insiderは記事に訂正を付けています*2。
Q. FDEの求人は、なぜ最近になって増えたのですか?
AIを売る側が、AIを顧客の業務で使われる状態にするところまで、自分たちで担う方向に動いたことが背景にあります。米国では求人の件数が2025年に前年の約6倍になり*1、日本では2026年4月以降にFDEの組織や職の公表が相次ぎました。日本で相次いだ職の新設の一部は、既存の仕事にFDEという名前が付いたものです。
Q. 事業会社でもFDEを採用していますか?
自社やグループの業務に向けたFDEの求人を出していた会社は、73社のうち7社でした(ソフトウェア企業を含みます)。大手の事業会社では、今回確認した範囲で10社が、FDEという名前を使わずに近い仕事を募集していました。
Q. FDEの年収はどのくらいですか?
年収を円で書いていた50社のうち、下限を書いていた49社の中央値は750万円、上限を書いていた46社の中央値は1,500万円でした(2026年9月時点)。年収の相場と、高くなりやすい理由は『FDEとは?年収・必要スキル・キャリアパスと企業が確保する方法』で整理しています。
出典
- *1Lightcast「Q: What is a Forward Deployed Engineer? A: The fastest growing AI job.」(2026年9月15日)。米国の求人掲載数
- *2Business Insider「Job postings for this tech role have grown more than 700% in the last year」(2026年5月16日公開、5月18日更新。データはIndeedが同誌に提供したもの。訂正あり)
- *3LayerX エンジニアブログ「Forward Deployed Engineerの募集を開始しました」(2025年7月17日)
- *4AI Shift TECH BLOG「Forward Deployed Engineer(FDE)職はじめました」(2025年12月23日)
- *5SHIFT「特定プロダクトに縛られないAI定着支援を実現 「アドバンスドFDE(フォワード・デプロイド・エンジニアリング)」の提供を開始」(2026年1月21日)
- *6アクセンチュア「アクセンチュア、マイクロソフトの協力のもと、AIの迅速な全社展開を支援する「フォワード・デプロイド・エンジニアリング」専門組織を設立」(2026年4月16日。米国での発表は2026年3月18日)
- *7デロイト トーマツ グループ「デロイト トーマツ、企業価値起点のコンサルティングサービス強化に向け、FDE人材の活用を本格化」(2026年4月30日)
- *8野村総合研究所 中期経営計画フォローアップ説明会 資料(2026年5月15日)
- *9セールスフォース・ジャパン「Salesforce、パートナーと共にAgentforceの実装を加速する「Forward Deployed Engineering(FDE)Partner Network」を日本で本格展開」(2026年6月8日)
- *10フォーティエンスコンサルティング「フォーティエンスコンサルティング、AI時代の成果創出を加速するFDE型コンサルティングを提供開始」(2026年6月16日)
- *11エクサウィザーズ「エクサウィザーズ、福岡を拠点にAIエージェントの社会実装を担う新会社「エクサフォワード九州」を設立」(2026年6月22日)
- *12Insight Edge Tech Blog「当社がForward Deployed Engineer(FDE)職を新設した背景と狙い」(2026年7月3日)
- *13日立製作所「現場全体の自律的な最適化に向け、HMAX Data Fabricなど新たな基盤・運用管理ソリューションを提供開始」(2026年9月3日)
- *14富士通「Palantirと富士通、企業のAI活用拡大に向けて戦略的パートナーシップを深化し、富士通はPalantirのGlobal FDE Partnerとして体制を強化」(2026年9月10日)
- *15富士通 採用情報「7449 【新卒_インターンシップ】世界最先端・エンジニア最高峰の職種 Forward Deployed Engineer」(2026年9月21日確認)
- *16各社の採用ページ(2026年9月21日確認)。みずほフィナンシャルグループ「AIエンジニア」、第一生命「AIソリューションマネージャー」、ファーストリテイリング「生成AI・機械学習エンジニア」、東京ガス「テックリード(シニア・フルスタックエンジニア)【DX推進部】」ほか
- *17キャディ「Staff Forward Deployed Engineer」求人(2026年9月21日確認)
- *18シェアダイン「Forward Deployed Engineer(FDE)」求人(2026年9月21日確認)
- *19RevComm「Forward Deployed Engineer(FDE)」求人(2026年9月21日確認)
- *20ブーストコンサルティング「FDE(Forward Deployed Engineer)」求人(2026年9月21日確認)
- *21ACES「【シニアテックリード】最先端AIの社会実装PJを最前線でリードするFDE(技術裁量◎/AI経験不問)」求人(2026年9月21日確認)
- *22アクセンチュア「ServiceNowとアクセンチュア、エージェント型AIの全社展開を加速するFDEプログラムを開始」(2026年6月2日。米国での発表は2026年5月6日)
- *23アクセンチュア「アクセンチュアとGoogle Cloud、Gemini Enterpriseを活用し、世界の企業におけるエージェント型企業変革を支援するため協業を拡大」(2026年5月13日。米国での発表は2026年4月22日。FDEを含む数千人規模の体制でプログラムを提供すると記載)
- *24Accenture「BLOG: Accenture Launches Forward Deployed Engineering Program with SAP」(2026年6月8日)
- *25マネーフォワード「【Forward Deployed Engineer(Internal)】AX推進本部_東京」求人(2026年9月21日確認)
- *26STRACT「社内FDE(Forward Deployed Engineer)」求人(2026年9月21日確認)
- *27PayPayカード「AIトランスフォーメーション・リード(AI Forward Deployed Engineer)」求人(2026年9月21日確認)
- *28Palantir「Deployment Strategist - Japan Commercial」求人(2026年9月21日確認)
- *29LayerX「【Ai Workforce】AIコンサルタント(Deployment Strategist)」求人(2026年9月21日確認)
- *30ITmedia AI+「「FDE」って結局、客先常駐SEのリブランディングじゃないの? アクセンチュアに聞いてみた」(2026年6月1日)
- *31インターセクト「SES経験者歓迎/顧客へ本質的な価値を届けるFDEになりませんか」(Wantedly、2026年1月28日掲載、2026年9月に掲載終了)
- *32Plank「The FDE job market, mapped」(2026年9月12日)。FDE人材の派遣事業者による集計で、掲載中の求人の件数(採用人数ではない)
- *33OpenAI「OpenAI launches the OpenAI Deployment Company to help businesses build around intelligence」(2026年5月11日)
- *34Amazon「AWS invests $1 billion to embed AI forward deployed engineers with customers」(2026年6月30日)
- *35Sierra「Outcome-based pricing for AI agents」(2024年12月10日)
- *36LayerX「【Ai Workforce】Senior Forward Deployed Engineer」求人(2026年9月21日確認)
- *37ストックマーク「1184【Dev】Forward Deployed Engineer(生成AI / 顧客実装)」求人(2026年9月21日確認)
- *38Preferred Networks「Forward Deployed Engineer /フォワードデプロイドエンジニア (AI Products & Solutions事業本部)」求人(2026年6月18日掲載、2026年9月21日確認)
- *39Salesforce「How Forward Deployed Engineers Are Proving AI Makes Tech Jobs More Human」(2026年3月18日)
- *40総務省「令和8年版 情報通信白書」図表Ⅰ-2-1-6(2026年7月24日)。企業向けアンケート(2026年1〜2月、従業員10名以上でデジタル化に取り組む企業の管理職以上、日本の有効回答515)。生成AIの活用方針を「わからない」と答えた回答者を除く
- *41総務省「令和8年版 情報通信白書」図表Ⅰ-2-1-3(2026年7月24日)。同じ企業向けアンケート。生成AIの利用を禁止していると答えた回答者を除く。米国の値は図表による
- *42IPA(情報処理推進機構)「DX動向2026」図表3-14(2026年7月30日)。AIを導入済みまたは試験利用中で、導入の効果が一定以上あったと答えた国内企業853社の回答(複数回答)

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