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アンカー株式会社のロゴが入ったグリーンウォールの前に立つ、執行役員の北 哲哉さん

40アカウント3名体制が1名体制に。全部署のAI化で、社内効率化だけでなく、顧客への価値提供にも大きなインパクト。

BtoCに特化したグロースマーケティング支援を手がけるアンカー株式会社様。営業・運用・管理の各部署にAI人材を一人ずつ配置し、全社で並行してAI活用を進めています。社内の効率化にとどまらず、新規受注のスピードと既存クライアントへの提供価値の両方が伸び始めています。

Platform2026/08/20

お話を伺った方

  • 北 哲哉さん

    アンカー株式会社 執行役員。バックオフィス全体の統括からMVVの刷新・人事制度の整備までを担い、その後は営業・運用の直接部門へ。現在は営業部署と運用部署を兼務しながら、役員として全社最適の観点で事業を統括。

抱える課題

業界柄AIのキャッチアップは早く、社内研修も半年続けて全社で本気で取り組んでいたが、知識の習得を業務インパクトに変える段階で壁にぶつかっていた。業務解像度の高い人がAIを突き詰めなければ成果は出ないが、その人材はすでに社内で重要な役割を担っていて時間がない。逆に時間に余裕のあるメンバーに任せると、今度は業務解像度が足りず、業績や生産性につながるアウトプットにならない。記事LPはほぼ外注でコストがかかり、検索広告のキーワード調査は1件180分、コーポレートは毎月の定常業務に追われていた。

効果

  • 営業・運用・検索広告・SNS・コーポレートの各部署にAI人材を一人ずつ配置。記事LPの改善は半日から20分、LPの制作は1ヶ月半から2週間になり、検索広告は3名で見ていた40アカウントを1名で回せる状態に
  • 提案資料の作成が速くなったことで新規営業と受注から配信開始までのスピードが上がり、受注数が増加。記事LPの改善速度と動画の本数が伸びたことで、既存クライアントの成果にもつながっている

課題:早くから本気で取り組んでも、業務インパクトが生まれない。「時間を短縮するために、まず時間をかけないといけない」

Q. まず、AOMにご相談いただく前に抱えていた課題を教えてください。

私たちはもともと情報感度が高く、AI活用にもかなり早期から着手していました。自分たちで週1〜2回の社内研修を半年間ガッツリ開催するなど、全社でのAI化に本気で取り組んでいたんです。ただ、業界全体でも手探りの領域だからこそ、単なる知識の習得にとどまらず「どう実務の成果に結びつけるか」という最高レベルの実用化を目指す中で、業務インパクトを生むための次の壁にぶつかっていました。

Q. 何がボトルネックだったのでしょうか。

業務解像度の高い人間がAIを突き詰めていかないと、全然インパクトが生まれないということです。ところが業務解像度の高い人は、すでに会社の中で重要な役割になっているので、そんな時間はない。時間を短縮するために、まず時間をかけないといけない。この歯がゆさがすごくありました。

逆に時間のある人、新卒などに任せてみようかとも考えました。新しいことの吸収も早いだろうと。ただ今度は業務解像度が低いので、業績や生産性につながらないアウトプットが多く、最初はUIを見た時に「おっ」となるんですが、結局「それならExcelやスプレッドシートでよくない?」と。業務インパクトが全然ないんです。両方がネックでした。

Q. 部署ごとには、どのような詰まりがあったのでしょうか。

私が見ている運用の領域でいうと、記事LPが伸ばしどころでした。クリエイティブもLPも社内で良いものを作れますし、運用者も揃っています。ただ記事LPについては書き手の人数が限られていて、ほとんどを外注に出していたため、コストがかなりかかっていました。

記事LPは、書ける人の採用競争が業界の中でも激しい領域です。社内の体制を厚くするのは簡単ではないので、だからこそ仕組みで何とかしないといけないと思っていました。

他の部署も同じような詰まりを抱えていました。検索広告はキーワード調査や競合分析がコツコツやらないといけない作業で、1つ調べるのに180分かかっていました。コーポレートは毎月の定常業務を延々と回している状態で、人は増やしていきたいけれど間接比率は上げたくない。営業は提案資料の作成に時間がかかり、型を作って情報をはめるだけにする試みも何度もやってきましたが、クライアント様ごとにカスタマイズが必要で定着しませんでした。動画は台本を作るリソースとスキルが足りず、1日に数本しか作れませんでした。

会議室でノートパソコンを前に、手振りを交えて当時を振り返る北さん
北 哲哉さん

AOMを選んだ理由:構想は自分たちにある。その実現を担ってもらえるかどうか

Q. AOMを知っていただいたきっかけを教えてください。

知人からの紹介でした。一度お話しさせてもらったときに、構想は私たちの頭の中にあるので、その実現のところをしっかりやってくださるというところが、弊社代表にもすごく刺さったんです。

試しに一つミッションをお願いしてみたところ、私たちが手探りでやるよりも圧倒的に良いアウトプットが出てきました。これは使える、この取り組みの形がもしかしたら最適解かもしれないな、というのがありました。

Q. 他のサービスとも比較されましたか。

もともとWebマーケティング業界に特化した、オールインワンのAIツールを契約していましたが、特定のマーケティングツール1つに依存しない判断をしました。AI領域は日進月歩で、ChatGPTやGeminiなど汎用モデルの進化スピードは非常に速いです。だからこそ「常に最新のテクノロジー動向をキャッチアップし、その時々で最も精度が高く最速なモデルを使い分ける」という高い情報感度を持っていたい。ツールに縛られず、最先端のトレンドを柔軟に取り入れられる体制へシフトするため、それができるのがAOMだと考え投資に充てた形です。

Q. 体制はどのように決められたのでしょうか。

弊社は機能別にいろいろな部署があります。一部分だけのAI化(制作だけ、運用だけ等)では、部署間の引き継ぎで必ずスピードが落ちてしまいます。だからこそ、戦略から制作、運用、LPOまで「全社横断・全体最適」で並行してAI化を推進するため、各部署に一人ずつAI担当を配置しました。今期に関しては投資と割り切って、施策スピードを上げるための体制づくりを進めています。

実施したこと:機能別の各部署に一人ずつ。属人的だった判断を、誰でも回せる形に落とし込む

Q. どの部署で、どのような取り組みを進めていますか。

一部の部署だけで進めるのではなく、機能別の各部署で並行して動かしています。今は5名の方に入っていただいていて、部署ごとに担当が分かれている形です。

  • 営業 — 提案資料作成をハイスピード化し、生み出した時間でお客様の事業課題へより深く向き合う体制へ
  • SNS・クリエイティブ — 動画台本作成の自動化・高速化により、内製クリエイティブの検証数を劇的に増加
  • 運用・LPO — 高度なマーケティングリサーチデータ(超詳細ペルソナ等)をAIに読み込ませ、記事LPの改修・改善サイクルを超高速化
  • 検索広告 — キーワード調査と競合分析
  • コーポレート — 定常業務を自動化・効率化し、間接比率を抑えたまま全社のスピードを支える体制を構築

Q. 記事LPには、どのようにAIを入れているのでしょうか。

2つ進めています。1つは既存の記事LPのブラッシュアップです。これまで属人的だった判断を落とし込んで、頭を使わず手を動かすだけの人でも良い改修ができる状態に持っていく取り組みで、今は8割から9割ほどまで進んでいます。

もう1つは記事LPを1から作るというもので、こちらはまだ挑戦している段階です。私たちは案件が始まる前にマーケティングリサーチをかなりがっつりやるので、良い情報が溜まっているのですが、それを生かしきれていませんでした。

具体的には、案件が始まる前にマーケティングシートというものを作ります。この中に、その商品を買うであろうペルソナ像をかなりこと細かに落とし込んでいるので、その情報を入れると全然違うアウトプットが返ってくるんです。何も入れないと「40代の女性にとってこれは微妙です」というような雑なものしか返ってきませんが、詳細なペルソナを入れると、インサイトまで掘っていくようなアウトプットになります。

加えて、私たちが今まで作ってきた比較的良い記事LPを学習させています。訴求ではなくテクニックの部分、たとえばファーストビューに「この記事は1分で読めます」と入れておくと下まで読まれる確率が高くなる、といったものですね。そういう情報を事前にたくさん読み込ませることで、ある程度ずれていないものが出てくる状態になっています。

Q. AIと人の役割分担については、どうお考えですか。

明確に役割を分けています。AIには「大量・高速なデータ処理やリサーチ」を任せます。そして人間は、AIが生み出した時間をすべて「深い事業理解・戦略立案・顧客のLTV最大化」に投下します。AIを単なる社内の業務効率化ツールで終わらせず、お客様の実利益に直結する部分に人間のリソースを全振りできるのが、私たちの最大の強みだと考えています。

記事LPを1から作るところは、やはり人の感情をどうやって揺さぶるかなので、調整に苦戦している部分もあります。ただ、もうすぐ形になるという手応えはちゃんとあります。

Q. 社内のルールとして決めていることはありますか。

業務解像度の高い人間しかディレクションを取らない、ということです。業務解像度の高い人がAIをどう使いこなすかを設計しないと、結局使い物にならない。それは過去の失敗としてあったので、社内ルールとしてやっています。

成果:記事LPの改善が半日から20分に。3名で見ていた40アカウントを1名で回せる状態へ

Q. 目に見える成果は出ていますか。

私が見ている運用部署でいうと、記事LPの改善スピードは圧倒的に速くなりました。運用者は3名いて、記事LPの改善に携わり始めたばかりのメンバーもいます。以前はやり出すと半日かかったりしていたものが、本当に20分ほどで終わるようになりました。

検索広告の部署も、キーワード調査や競合分析が180分から10分になったと聞いています。この部署はもともと3名で40アカウントを見ていたのが、いろいろあって今は1名になってしまったのですが、普通に考えたら一人で40アカウントは物理的に無理な量です。それが今、問題なく見られている状態です。

コーポレートも、月間で何時間もかかっていた業務が、今はだいたい全部の業務を合わせて30分ほどまで短縮できているそうです。これも非常に素晴らしいと思っています。

Q. 品質の面ではいかがですか。

人よりもAIの方ができている、クオリティが高いということも全然あります。動画の台本や記事LPの赤入れなどは、人間がやるとなかなか気づかない観点が出てくるので、斬新な切り口が多いです。この業界にいると、基本的に過去の経験を元にブラッシュアップしていくので、頭が固くなってしまうときもあるんです。AIに読み込ませると、確かにこの切り口はあるな、というものが出てきます。

広告代理店はどこの会社もやっていることが一緒なので、どこで差をつけるかといえば、クリエイティブや記事LP、LPになります。そこでありきたりではない訴求を新しく作れるというのは、それだけでも十分に価値があると思っています。

Q. クライアントへの提供価値も変わってきたということでしょうか。

とてもシンプルに言うと、私たちは顧客数を増やすか、顧客を縦に伸ばすかの2択しかないのですが、どちらも伸ばせています。

対応できる顧客数は以前に比べて増えました。提案書がすぐ作れるようになったので新規営業のスピードが速くなり、受注したものを素早く開始に持っていけるようにもなりました。LPももともと1ヶ月半かかっていたものが2週間ほどで作れるようになったので、受注してから配信開始までが速くなる。結果として受注数も増えましたし、そのサイクル全体がとても速くなっています。

縦に掘る方は、記事LPの改善がどんどん速くなって効果を出しやすくなり、効果が良くなると配信も伸ばせる、という形です。動画のチームでいうと、以前は1日に数本しか作れないリソースとスキルしかなかったのが、今は1日に何十本もリリースできるようになりました。動画広告は本数が売上に比例するような構図になっているので、どれだけ新しい動画を作っていけるかで左右されます。それができているので、縦にも掘れている感覚があります。

大型モニターのある会議室で、手を合わせながら成果を語る北さん
北 哲哉さん

今後の展望:AI推進で業界のトップランナーへ。「スピードだけは絶対に負けない」

Q. 今後、取り組んでいきたいことを教えてください。

AIの推進に関しては、業界でもトップランナーになりたいと強く思っています。私たちの人数規模だからこそできることが絶対にあると思うので。これが大企業だとできないと思うんです。ちょうどいい規模感だと個人的には思っているので、ここで強い幹を作っておけば、自然と良い大きくなり方になっていくのではないかと考えています。

その「私たちの規模だからこそできること」の中心が、スピードです。私たちの規模感でいくと、スピードで負けたらもう終わり。逆に大企業は、人材もソリューションも多くて何でもできますが、あの規模ではスピードを出せません。だから、スピードだけは絶対に負けない。ここは強いこだわりとして持っています。

また、自社の事業もいくつか展開しており、新規事業をしっかり立ち上げてキャッシュポイントを増やしていきたいと思っています。今は海外ブランドを日本にローンチする事業や、AI人材の支援、投資事業、経営コンサルティングなどに挑戦しています。マーケティングの会社が一つの事業をやったことがないというのは、経営したことのない経営コンサルタントのようなもので、それはすごく嫌だという考えがあるんです。私たち自身が新規事業を開発し、事業主として売上や利益に向き合っているからこそ、お客様にとっての「LTV最大化」の重要性が痛いほど分かります。変化の激しいこの業界では「情報感度」が成果を大きく左右します。だからこそ、最新のAI技術をどこよりも高く・速くキャッチし、その恩恵を表面的なCV数ではなく、クライアントの実利益に還元していく。そんな「事業主思考」を持ったプロ集団として、業界のトップランナーを目指します。

Q. 事業の伸ばし方について、大事にされている考えはありますか。

たとえば、ある代理店さんと月間1億円の取引があるクライアント様がいて、それを私たちにリプレイスしていただければ、普通に考えれば嬉しいことです。でも私たちはそれをあまり価値だと思っていません。クライアント様のお金の出どころが変わっただけで、事業は伸びていないので。私たちが入ったことによって、その1億円の取引額が2億、3億になるのであれば、それは私たちの価値です。稼ぎ方についても、グロースする部分に価値を見出したいという思いがあります。

私たちはまずお客様が儲からないと広告費も出していただけないので、お客様にまず儲かってもらおうというスタンスです。この点はカルチャーとして全員に浸透しています。

── 業務解像度の高い方がAIを握り、全社で並行して進める。その体制づくりと、クライアント様の事業が伸びることに向けて、引き続き私たちも貢献していければ嬉しいです。本日はどうもありがとうございました。